液体培地で発育させた
Triehophyton mentagrophytes 菌糸に対するモルホリン系抗真菌剤amorolfine (MT-861) の影響を, 走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて微細形態学的に検討した.MT-861 は低濃度 (0.8ng/m
l) で
T.mentagrophytes菌糸の発育を阻害した.走査電顕観察から認められた本剤の低濃度域での菌糸形態の変化は軽度であり, 薬剤濃度0.8ng/m
l作用後には菌糸表層部に雛襞がみられた.薬剤濃度と作用時間に比例して菌糸の変形, 表層剥離の程度が増強され, 濃度80 ng/m
lの作用では菌糸形態は著しく破壊された。一方, 細胞内微細構造の変化は8ng/m
l以上の濃度の薬剤を作用させた場合に生じた。この薬剤濃度下では, 細胞壁が肥厚し, 細胞壁内に顆粒構造が多数形成されたが, 核およびミトコンドリアの微細構造は正常であった.薬剤濃度を80ng/m
lに高めた場合には, 細胞膜, 核膜およびミトコンドリアの膜構造の断裂, 融解がみられ, MT-861の膜構造に対する障害作用が示された。この薬剤濃度では細胞内の電子密度も著しく低下していることから菌糸細胞がもはや生理活性を失い, 死滅していることが示唆された。
これらの微細形態学的所見から, MT-861は
T.mentagropdytes 菌糸細胞に細胞壁肥厚と顆粒構造の形成を促し, さらに膜構造を破壊する作用により, 菌糸細胞に対して殺菌的に働くことが示唆された.
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