日本医真菌学会雑誌
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32 巻, 3 号
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  • 渡辺 晋一, 高橋 久, 滝沢 清宏, 石橋 康正
    1991 年 32 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 1991/07/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    通常の浅在性のカンジダ症では生検を行わなくても, 直接鏡検により, その特有な寄生形態 (桑実状の分芽胞子集団と仮性菌糸) を示すことから, 直ちにカンジダ症と診断することができる.しかし, ある種の浅在性皮膚カンジダ症や深在性のカンジダ症では表在性の皮膚・粘膜カンジダ症における典型的寄生形態を示さず, 他の真菌症と鑑別が困難なことがある.以前我々は臨床像あるいは直接鏡検所見では爪自癬と区別がつかないが, 常にカンジダが培養される症例をいくつか経験し, この疾患が従来から記載されているカンジダ性爪囲・爪炎と臨床・病理学的に異なり, しかも何らかの免疫不全を背景に発症した原発性の爪カンジダ症である可能性を指摘した.しかし, 分離されたカンジダがcontaminationとして培養された可能性は完全に否定されたわけではない.そこで, 今回我々は, 抗 Canelida albicans血清を用いて, 爪甲内の真菌を免疫組織化学的に染色し, 爪甲内に存在する白癬菌類似の菌要素が白癬菌でなく, カンジダであることを証明した.またこの抗 Canelida albicans血清がカンジダに特異的であるか否かを検討するために, 白癬14例, 癲風5例, スポロトリコーシス2例, 皮膚クリプトコッカス症2例, クロモミコーシス1例, 皮膚アスペルギルス症1例, 皮膚トリコスポロン症1例から得られた病理標本も同時に染色し, この抗体がカンジダ症に特異的であることを確かめた.
  • 谷口 彰良, 保 直行, 石川 千恵子, 手計 雅彦, 久米 俊久, 荒木 一, 出井 敏雄, 久米 光, 奥平 雅彦
    1991 年 32 巻 3 号 p. 197-203
    発行日: 1991/07/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    重篤な内臓カンジダ症の迅速かつ簡便な免疫学的診断法の一つとしてカンジダマンナンを検出するSlide latex agglutination (LA) testを開発した.本試薬の検出感度は精製マンナン抗原を健常人血清に添加し, プロテアーゼ処理して測定した場合, 3.9ng/mlであった.本LA試薬を用いて内臓カンジダ症44例の血清についてプロテアーゼ処理して検索した結果, 44例中14例 (32%) が陽性を示した.そのうち全身性, 肺, 重篤な消化管カンジダ症およびカンジダ性敗血症患者1血清では21例中14例 (66.7%) と高い陽性率を示した.なおプロテアーゼ処理血清では非カンジダ症患者血清, 健常人血清はすべて陰性であった.
    以土の結果より, 今回開発したLA試薬は迅速かつ簡便でしかも信頼性の高い内臓カンジダ症の診断用試薬として有用であると考えられた.
  • 西本 勝太郎, 塚崎 直子, 田中 敬一
    1991 年 32 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 1991/07/15
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    cotton swab sampling法を用いて片側足自癬患者の趾問の病変側および外観上皮疹を認めない反対側の趾問の真菌学的検索を行った.全79例中31例 (39, 2%) では患側趾からのみ病原菌と思われる皮膚糸状菌が培養されたが, 他の23例 (29.0%) では健常側からも皮膚糸状菌が分離された.このうち12例では分離された菌は患側のものと同種であったが, 他の7例では異なった種の皮膚糸状菌であった.さらに4例では健常側のみから皮膚糸状菌が分離された.今回の検索成績に示すように, 一見健常と思われる皮膚面にもかなりの頻度で皮膚糸状菌の存在することが確かめられた.これらの皮膚糸状菌は単に腐生的に存在するものばかりではなく, すでにsubclinical infectionの段階にあるものも含まれているものと考えた.足白癬の有効なコントロールのためにはこのような病変の適確な把握と処置が重要であることを強調した.
  • 友田 恒典, 高井 晶子
    1991 年 32 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 1991/07/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    日和見感染症としての Candida 呼吸器感染症の病態を知るため二三の呼吸器疾患について喀痰中のCandida量をしらべ, 同時に喀痰中の分泌型 IgA (SlgA) およびlysozymeの測定を行った.喀痰中のCandida量が喀痰1gあたり103~108を認めた呼吸器疾患の症例 (肺癌, 気管支炎, 肺結核) の中, Candida呼吸器感染症合併例は肺癌症例に多かった.
    喀痰中のSlgA, lysozymeの低値例には喀痰中のCandida量が多く, Candida呼吸器感染症合併例も多かった.反対に喀痰中のSlgA, lysozymeの高値例に喀痰中のCandidaの多いものは少なく, Candida 呼吸器感染症合併例も少なかった.とくにCandida呼吸器感染症合併例と非合併例をくらべた場合, 非合併症例のlysozymeは合併例のそれより有意に高値であった.また試験管内実験においてもlysozymeによってCandidaの発育が抑制された.Lysozymeの細菌に対する発育抑制に関する報告はあるが, 本報告ではlysozymeが気道や肺におけるCandidaの発育抑制にも関与していることを臨床的, 実験的に認めた.
  • 小野 厚, 山本 千尋, 小島 崇嗣, 木下 洋, 松崎 修二, 岩瀬 帥子, 小林 陽之助, 原田 直己, 螺良 愛郎, 乾 俊彦
    1991 年 32 巻 3 号 p. 215-225
    発行日: 1991/07/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    未熟児の全身カンジダ症は多臓器を侵襲し, 予後不良の感染症として近年注目されている.今回我々は, 超未熟児でカンジダによる肺動脈塞栓を伴った全身カンジダ症の1例ならびに小腸断裂時の腹水培養からカンジダを検出した1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.
    今回の2症例の経験から, 重症の未熟児・新生児管理中には常にカンジダ症の発症に留意することが必要と考えられた.
  • Trichophyton mentagrophytes発育菌糸形態に及ぼす影響
    西山 彌生, 浅黄 友季世, 平谷 民雄, 山口 英世, 山田 直子, 大隅 正子
    1991 年 32 巻 3 号 p. 227-237
    発行日: 1991/07/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    液体培地で発育させたTriehophyton mentagrophytes 菌糸に対するモルホリン系抗真菌剤amorolfine (MT-861) の影響を, 走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて微細形態学的に検討した.MT-861 は低濃度 (0.8ng/ml) でT.mentagrophytes菌糸の発育を阻害した.走査電顕観察から認められた本剤の低濃度域での菌糸形態の変化は軽度であり, 薬剤濃度0.8ng/ml作用後には菌糸表層部に雛襞がみられた.薬剤濃度と作用時間に比例して菌糸の変形, 表層剥離の程度が増強され, 濃度80 ng/mlの作用では菌糸形態は著しく破壊された。一方, 細胞内微細構造の変化は8ng/ml以上の濃度の薬剤を作用させた場合に生じた。この薬剤濃度下では, 細胞壁が肥厚し, 細胞壁内に顆粒構造が多数形成されたが, 核およびミトコンドリアの微細構造は正常であった.薬剤濃度を80ng/mlに高めた場合には, 細胞膜, 核膜およびミトコンドリアの膜構造の断裂, 融解がみられ, MT-861の膜構造に対する障害作用が示された。この薬剤濃度では細胞内の電子密度も著しく低下していることから菌糸細胞がもはや生理活性を失い, 死滅していることが示唆された。
    これらの微細形態学的所見から, MT-861はT.mentagropdytes 菌糸細胞に細胞壁肥厚と顆粒構造の形成を促し, さらに膜構造を破壊する作用により, 菌糸細胞に対して殺菌的に働くことが示唆された.
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