日本医真菌学会雑誌
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血液疾患における内臓真菌症診断プロトコールとfluconazoleの効果
山下 えり子久米 光塩谷 茂望月 真弓奥平 雅彦
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1993 年 34 巻 3 号 p. 331-341

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抄録

内臓真菌症の制御のためには本症の早期診断と発症早期の抗真菌剤の投与が最も重要となろう. 今回我々は血液疾患患者を対象に, 発症早期の診断と治療の開始を目的として, 定式化したプロトコールを作製し, その診断プロトコールの臨床的有用性を評価すると共に, 確診例および疑診例に対するfluconazole (FLCZ) 投与の効果について検討した. 対象は1989年7月から1991年4月まで当院血液内科に入院した患者200例のうち, FLCZが投与された69例中, 各種の検査やFLCZの投与量など診断や薬効評価に適当と思われた30例について検討した. 確診例は20例で疑診例は10例であった. 確診例はカンジダ症19例, トリコスポロン症1例であり, うち2例は剖検によって肺アスペルギルス症の併発が確認された. 確診例のFLCZの平均総投与量は3637.5mg, 平均投与日数は18.8日で有効率は80%であった. 疑診例としてFLCZが投与された10例は全て急性白血病患者で, 易感染指数がプラス (低顆粒球数の病態と抗生剤不応性の発熱) の連続日数は平均6.1日であったのにもかかわらず, 最終的に真菌症の続発はみられなかった. FLCZによる副作用は併用薬剤 (latamoxef, minocycline) とともに中止することで回復した白血球減少と, 流涎が各々1例ずつであった. これら一連の検索結果から, 発症早期の診断と治療の開始に資することを目的に作製した検索プロトコールは, 実地的観点から有用であろうことが示唆された. また発症早期に用いる場合のFLCZの有効性と安全性が改めて確認された.

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