日本医真菌学会雑誌
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プロトテコーシスの一例
蜂須賀 裕志楠原 正洋
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キーワード: 糖尿病
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1993 年 34 巻 3 号 p. 373-379

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抄録

症例は71歳, 男性, 福岡県久留米市在住. 1992年1月中旬に右前腕に表皮剥離, ビランを生じ近医皮膚科を受診した. 生検にて真皮内にPAS染色陽性の真菌類似の細胞を多数認めたために, 久留米大学病院皮膚科に紹介された. 初診時, 右手関節から前腕伸側にかけて隆起性紅斑局面があり, 表面に鱗屑および痂皮を認めた. 痂皮の直接鏡検にて円形で胞子様の細胞を多数認めた. 組織学的に表皮の偽癌性増殖および真皮内に肉芽腫の形成があり, PAS染色およびグロコット染色陽性の細胞を多数認めた. 組織片をサブローブドウ糖寒天培地にて室温で培養し, カンジダに類似した白色クリーム状のコロニーを分離した. 分離株の塗抹標本では細胞内に娘細胞を形成する特徴的な形態を認めた. 分離株の形態ならびに糖利用試験の結果より本分離株をPrototheca wickerhamii Tubaki et Soneda 1959と同定した. 以上より本症をプロトテコーシスと診断した. プロトテコーシスは無葉緑素藻類であるプロトテカにより生じる稀な感染症であり, 本邦でもその報告は自験例を含めて9例のみである.

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