日本医真菌学会雑誌
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無気肺を呈し喘息症状を伴わなかった,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の1例
高木 宏治梅野 守男武田 誉久澤江 義郎
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1994 年 35 巻 1 号 p. 61-68

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抄録

無気肺を呈し喘息症状を伴わず,しかも最近の3年間は毎年10月に肺炎を繰り返した,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の1例を経験した.
症例は65歳女性.持続する咳嗽を主訴に1992年10月入院.理学所見に異常はなかった.検査成績では白血球数は5,700/mm3と正常であったが,分類で好酸球が10%と増加していた.CRP0.1mg/dl,赤沈1時間値34mmで炎症所見はなかった.胸部X線写真では左中肺野に斑状の異常陰影を認めたため,肺炎としてclarithromycin 400mg/日を8日間投与した.しかし症状は改善せず,左肺上葉の無気肺陰影を呈したため気管支鏡検査を施行したところ,左上葉支入口部に黄白色の壊死物質が閉塞しており,そこからAspergillus fumigatusが検出された.IgE 15,130IU/ml,IgE-RASTアスペルギルス22.8UA/ml(正常0.34以下)と高値で,かつ,アスペルギルス抗体がOuchterlony法で8倍と陽性であったためABPAと診断した.そこで,気道閉塞物を可及的に除去し,fluconazole (FLCZ)の1日400mgを40日間投与したところ軽快した.FLCZの本菌に対するIC 99は100μg/mlであったため,気道閉塞物の早期除去が有効であったと思われた.

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