寒天埋没法は,菌を接種した寒天ブロックをマウス腹腔内に埋没させ,以後経時的に回収して,寒天内の菌の寄生形態を観察する方法として知られている.今回,我々は,同様の操作を行った寒天ブロックをマウスの背部の表皮下に埋没させ,クロモミコーシスにおける経表皮排出現象の観察を試みた.
Fonsecaea pedrosoiの菌糸が生育している寒天ブロックをC57BL/6マウスの背部表皮下に埋没し,経時的に寒天ブロックを含む皮膚を採取して,病理組織学的に検討を行った.埋没後2週を経ると,寒天ブロック周囲に多核白血球および小円形細胞の浸潤を認めた.4週後には,組織球と類上皮細胞も出現し,化膿性肉芽腫性細胞浸潤となった.同時に寒天ブロック上方の表皮突起も偽癌性増殖を示した.6週以降になると,これら浸潤細胞を取り囲むように表皮突起は延長し,一部延長した表皮突起に取り囲まれた微小膿瘍や菌を含んだ寒天の経表皮排出現象を認めた.以上の実験結果より寒天埋没法はクロモミコーシスの早期感染組織像と経表皮排出現象を経時的に観察するための,有用な実験方法と考える.