日本医真菌学会雑誌
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外科領域の難治性真菌感染症
角田 卓也谷村 弘紺谷 忠司稲田 佳紀水城 奈美
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1998 年 39 巻 4 号 p. 203-209

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抄録

外科領域における深在性真菌感染症について大学病院外科における現状を調査した結果,手術部位にかかわらず25%に真菌が検出され,特にCandida albicansは食道癌や胃癌手術後には2番目,肝・胆・膵癌や大腸癌の手術後には3番目に検出頻度が高い菌種であった.しかも,手術局所よりもむしろ遠隔部位の感染巣から高頻度に真菌が検出され,fungnl translocationの可能性が示唆された.
このように,深在性真菌感染症はまれな感染症でなく,むしろ,真菌感染症であるという診断が困難なことから見過ごされてきた可能性がある.特にカテーテル敗血症からの検出菌の60%は真菌であり,最も重要な起炎菌であるといえる.
真菌の侵入門戸として,external pathwayとinternal pathway (microbial translocation)が考えられ,external pathwayを阻止する目的でnutrition support team (NST)活動を1994年から導入し,カテーテル敗血症を2%台まで抑制することに成功した.
深在性真菌感染症の診断法では現在でも満足すべきものはなく,できるだけ早期に臨床的に有用な真菌血症の診断法を確立する必要がある.そのため,われわれはPCR法を用いた分子生物学的診断の確立を目指し,18S rRNAのなかで,Candida属に特異的なV4 regionをprimerとしてPCRを施行した結果,外科臨床上重要なC. albicans (163bp), C. tropicalis (162bp), C. parapsilosis (164bp), C. glabrata (177bp), C. krusei (159bp)のPCR産物が得られ,一般細菌(MSSA, MRSA, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Staphylococcus species, Streptococcus species)ではPCR産物は得られず,このPCR法は真菌に特異的であるといえる.また,RFLPsを応用することで臨床上重要な5種類の真菌も同定でき,臨床的有用性が示唆された.

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