日本医真菌学会雑誌
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Exophiala dermatitidisによるmelanonychiaの1例
畑 康樹仲 弥西川 武二
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キーワード: 黒色爪
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1999 年 40 巻 4 号 p. 231-234

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抄録

Exophiala dermatitidisによるmelanonychiaの1例を報告した.症例は61歳,女.右第1趾爪の色調の変化を主訴に当科通院し,尿素剤,ステロイド剤外用にて加療されたが改善しなかった.培養したところ黒色の真菌が3回とも分離された.病爪の直接顕微鏡検査では大型,褐色,厚壁の胞子と褐色の菌糸を認めた.集落の肉眼的観察,スライドカルチャー所見,発育温度よりExophiala dermatitidisと同定し,ミトコンドリアDNA分析にてもExophiala dermatitidisのパターンと一致した.塩酸テルビナフィンクリーム外用にて約4ヶ月後には改善した.従来fungal melanonychiaとして報告されている症例の中にはメラニンの沈着が明らかでないものや,メラニンが証明されても真菌由来のメラニンでないものも含まれ,この病名の使用に混乱が生じている感がある.我々はfungal melanonychiaをZaiasの提唱する爪真菌症の診断基準を満たし,その真菌の産出するメラニンにより褐色~黒色調を呈する爪真菌症と定義することを提唱したい.この定義に基づいて従来の報告例につき検討を加えたところ,10種の黒色真菌と真菌産出のメラニンが確認されているTrichophyton rubrumがfungal melanonychiaの原因菌として考えられた.

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