日本医真菌学会雑誌
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在日日系ブラジル人に生じたクロモミコーシスの1例
永尾 圭介松本 博子杉浦 丹畑 康樹
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キーワード: クロモミコーシス
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2001 年 42 巻 3 号 p. 119-122

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抄録
在日日系ブラジル人に生じたクロモミコーシスの1例を報告した.症例は41歳,男.平成3年来日.同8年頃より右前腕に環状の紅斑が出現し,近医で真菌感染症の診断にてラノコナゾール軟膏(アスタット軟膏TM)外用されるも改善せず当院来院.右前腕屈側に手拳大,辺縁が堤防状に隆起し,若干鱗屑を付着する環状紅斑を認めた.落屑の直接顕微鏡検査ではsclerotic cellを認めた.病理組織にて真皮に肉芽腫性病変を認め,中央にsclerotic cellを認めた.集落の肉眼的観察,スライドカルチャー所見よりFoncecaea pedrosoiと同定した.ミトコンドリアDNA分析は日本に多いF.pedrosoiタイプ1と一致した.南米ではタイプ4によるものが多く,経過も併せて来日後の感染と考えた.テルビナフィン125mg/日の内服にて軽快せず,本症例の原因菌のMICは0.76μg/mlであったので250mg/日の適応と判断し,テルビナフィン250mg/日と使い捨てカイロによる温熱療法を開始したところ皮疹は徐々に軽快した.
近年クロモミコーシスに対してテルビナフィンやイトラコナゾールが使用されているが,その有効率は従来の治療法と比較して決して十分なものではない.通常量では有効濃度に達していない可能性があり,個々の菌に対するMICの測定が重要と思われた.
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