日本医真菌学会雑誌
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核ribosomeDNAのnon-transcribed spacer領域の多型性に基づく病原真菌の分子疫学
本邦分離のArthroderma benhamiaeについて
望月 隆
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キーワード: 分子疫学
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2002 年 43 巻 1 号 p. 1-4

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抄録
極めて鋭敏な分子生物学的手法であるnon-transcribed spacer (NTS) 領域を含む核rib・some (r) DNAの制限酵素分析法を用いて, 本邦で分離されたArthroderma (A.) benhamiaeの分子疫学的検討を行った.2001年3月までに本邦で分離され, 同定が確定しているA.benhamiaeは13株であり, その分離地域は兵庫2株, 埼玉2株, 島根2株, 岐阜2株, 東京1株, 長崎4株である.このうち, 島根, 長崎株はペットとその飼い主, 岐阜株は同一患者の手と顔の病巣, その他は個別に分離されている.この13株では島根2株, 埼玉のうち1株と長崎4株の計7株が同一の, また岐阜の2株が同じ分子型を示した.残る4株は特徴的なパターンを示し, 13株は合計6分子型に分けられた.1980年以前にはA.benhamiaeは本邦に分布しないとされていることから, 本邦にはこれ以降複数のクローンが移入され, これらがペットの小動物の移動にともなって国内各地に拡散したと考えられた.また, ベルギー王立熱帯研究所から分与された交配の基準株4株も合わせて検討したが, 本邦分離株はベルギーの4株のいずれとも異なっていた.
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