日本医真菌学会雑誌
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造血幹細胞移植とFusarium solani感染症
鐘野 勝洋
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キーワード: 造血幹細胞移植
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2003 年 44 巻 3 号 p. 187-191

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抄録

造血器悪性疾患患者はimmunocompromised hostの典型例の一つであり,その治療に際しては真菌感染症等の重篤な日和見感染の合併が稀ならず認められる.代表的な真菌感染症であるカンジダ症やアスペルギルス症についてはその重要性が広く認識され,予防と治療において大きな進歩が達成された.しかし,造血器悪性腫瘍の治癒を目的とした同種造血幹細胞移植の普及により,フザリウム感染症等の新興真菌感染症の増加が報告されている.Fusarium属菌は土壌や植物に生息し,従来皮膚科・眼科領域における表在性感染の原因菌として知られていた.深在性・播種性感染の報告は血液疾患や臓器移植等のimmunocompromised hostにみられ,近年増加傾向を示している.播種性フザリウム症は広域抗生剤に対する不応性の発熱,呼吸器症状で発症することが多く,高率に真菌血症を合併,肺,肝臓・脾臓,腎臓,心臓等の臓器を障害する致死的な感染症である.血液培養での菌検出率が高く,アスペルギルス症や接合菌症などに比べると生前診断率は高い.
同種造血幹細胞移植後,抗真菌薬の予防内服中に播種性フザリウム感染症を発症し死亡した2症例を提示した.これらの症例は血液培養により確定診断されたが抗真菌薬による治療効果が得られなかった.フザリウム感染症に対しては既存の抗真菌剤の有効性が低く,治療成績向上のためには早期の診断と共に新たな抗真菌剤の開発が望まれる.

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