2003 年 44 巻 3 号 p. 203-207
ミャンマー渡航後に発症した,Microsporum ferrugineumによる頭部白癬の母子例を経験した.ミャンマー渡航の3ヵ月後2歳男児に発症し,その約1年後に母親である35歳女性に同症を認めた.臨床的にはいずれも炎症所見を伴わない不完全脱毛巣であり,組織学的には毛周囲に胞子が多数認められ(小胞子菌性寄生),頭部浅在性白癬と診断した.培養所見では特徴的な鉄錆色調の色素産生を認めた.診断および治療評価にウッド灯検査が有用であった.両例ともitraconazole内服にて治癒した.かつて本邦における頭部白癬の原因菌の主流であった本菌は現在では過去の原因菌として認識されているが,自験例は本菌が海外から輸入される形で再興した症例と考えられ,国際化の進む現代において今後も同様症例の増加が懸念される.