抄録
日本在来種であるクロマツやアカマツはマツ材線虫病に対して感受性であり、北米原産のテーダマツは本病に対して抵抗性を示す。これら3種の宿主3年生苗にマツノザイセンチュウ強病原性系統を接種し、時間経過ごとに木部放射柔細胞の細胞学的変化を観察および比較した。その結果、クロマツおよびアカマツでは、線虫が樹体内で顕著な増殖を示し始める以前に、樹体全体で木部放射柔細胞内において劇的な変化が観察されたのに対し、テーダマツでは線虫はほとんど増殖せず、組織学的変化も接種部位付近にのみ観察された。これらの結果は、木部放射柔細胞に劇的な変化が生じることが、病徴を進展させる重要な要素であることを示唆している。