日本線虫学会誌
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原著論文
  • 杉山 大樹, 澤之向 大樹, 長江 星八, 長谷川 浩一
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 53 巻 1_2 号 p. 1-10
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    Oscheius属線虫は自由生活性であり、そのうちある種は昆虫病原性を持つものも存在する。昆虫病原性を示すOscheius属線虫は病原性細菌を随伴すると考えられているが、随伴する細菌とOscheius属線虫との相互関係性はまだ十分に解明されていない。本研究では、ハチノスツヅリガを用いたベイトトラップ法により野外から分離した未記載種Oscheius属線虫をKHA501株とし、この線虫感染により死亡したハチノスツヅリガから分離したSerratia marcescens bKHA501との関係性について調べた。S. marcescens bKHA501は顕著な昆虫病原性を示し、かつOscheius sp. KHA501の餌となりうることがわかった。S. marcescens bKHA501を随伴させることで、自活性のOscheius sp. KHA501に昆虫病原性が付与された。自活性のCaenorhabditis elegansS. marcescens bKHA501を餌として利用できず、S. marcescens bKHA501の感染で死亡したハチノスツヅリガ上でも増殖できなかった。昆虫病原性細菌を利用するOscheius sp. KHA501は昆虫病原性およびスカベンジャーとしての優位性を獲得し、移動手段として線虫を活用する細菌と相利共生関係が成り立っていると考えられる。

短報
  • 伊藤 賢治, 小野寺 鶴将, 坂田 至, 串田 篤彦
    原稿種別: 短報
    2023 年 53 巻 1_2 号 p. 11-14
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    トマト近縁種Solanum peruvianumの「ポテモン」はジャガイモシストセンチュウ類の防除に有効な捕獲作物であり、北海道のオホーツク地域で発生したジャガイモシロシストセンチュウ(以下Gp)の緊急防除で利用され、高い効果をあげてきた。しかし、収益作物を休閑しての利用は農業生産活動に及ぼす影響が大きい問題があった。そこで、収益作物が栽培されていない小麦収穫後の8月中旬〜10月に「ポテモン」を栽培してGp防除が可能か検討した。 生育量は休閑栽培に比べて貧弱であり、早霜により栽培期間が短縮され、密度低減効果がやや低くなる場合もあったが、Gp密度は平均で28.2%へ減少し、無播種との差も有意だったことから、麦後栽培体系はGpの密度低減を期待できる栽培体系であることが明らかになった。

研究資料
  • 岡田 浩明
    原稿種別: 研究資料
    2023 年 53 巻 1_2 号 p. 15-18
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    寄主植物におけるシストセンチュウ寄生程度(メス成虫の出現数)を効率的に調べるために簡易な根箱を考案し、以前報告した。しかし植物根の一部が土壌中に生育するため、根箱内部に出現する成虫の6割程度しか表面から観察できないことや、根箱の両面で線虫数をカウントしなければならないなどの欠点があった。これらを改善すべく、土壌と根箱のフタの間に青色で30μm目合のナイロンシートを挟んだ「シート根箱」を作製した。寄主植物の苗をフタとシートの間に定植して栽培したところ、根系はシート上にのみ生育・展開し、根箱の表面から観察できた。一方、裏面(土壌中)には根毛以外侵入しなかった。テンサイシストセンチュウの幼虫を接種して寄生させたところ、表面(フタ側)から観察できたメス成虫の個体数は、根箱を解体して取り出した根系上の個体数と相関が高く、また、後者の個体数の9割に達した。よってシート根箱では、寄主植物根系に出現したメス成虫のほとんどを片側表面のみで観察することが確認でき、幼虫接種による寄生メス数調査をより正確かつ効率的に行えるようになると期待される。

日本線虫学会第30回大会講演要旨
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