日本線虫学会誌
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原著論文 (和文)
日本産ヨモギツブセンチュウの ITS1-5.8SrDNA-ITS2 領域の塩基配列の解析
大胡 聖嗣竹内 智昭菊地 泰生小倉 信夫
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2014 年 44 巻 2 号 p. 49-53

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抄録

本邦でのヨモギツブセンチュウ Subanguina moxae の生息地は点在している。そこで、7 か所の採集地(つくば、大月、安曇、島々、梓川、遊佐および富士川)の個体群において地理的な生息地の違いが塩基配列の違いとして ITS1- 5.8SrDNA-ITS2 領域に生じているかを調査した。また、本邦産とロシア連邦沿海地方産および中国雲南省産の同部位の塩基配列を比較した。その結果、本邦の各採集地の個体群間では塩基配列の同一性は 99.7 ~ 100%(672 ~ 674/674塩基)であり、3 地点(つくば、遊佐および富士川)の個体群の塩基配列が完全に一致した。本邦産とロシア産との比較では、99.7 ~ 100% の同一性であった。本邦産と中国産との比較では、同一性は 99.1~99.4%(668 ~ 670/674 塩基)であった。本邦産とロシア連邦沿海地方産および本邦産と中国雲南省産との間の ITS 領域の同一性は、それぞれの直線距離が短いほど高くなり、距離が長いほど低くなった。しかし、つくば、遊佐および富士川産とロシア連邦沿海地方産の線虫の ITS 領域の塩基配列は完全に一致した。また、本邦での各採集地における個体群間の ITS 領域の同一性の高さと採集地間の直線距離に一定した関連がみられなかった。したがって、中国雲南省のヨモギツブセンチュウは本邦産やロシア連邦沿海地方産とは時間的に異なる時点で分岐し、距離が離れていった可能性があるが、更に各地点の中間地点およびその他の国でヨモギツブセンチュウの分布調査を行い、解析を行う必要がある。

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© 2014 日本線虫学会
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