2018 年 48 巻 1 号 p. 19-26
Thelastomatid線虫(線形動物門:Oxyurida目:Thelasromatoidea科)は、広く節足動物後腸に生息する絶対寄生性線虫であるが、宿主に与える影響についてほとんど知られてない。以前の研究で、Thelastomatidae科線虫の存在がゴキブリ宿主(クロゴキブリおよびワモンゴキブリ)の後腸細菌叢に影響を与えることを示した。今回、Thelastomatidae科線虫が感染した(本来の寄生虫であるProtrellus sp.が自然感染している場合、あるいは本来の寄生虫でないLeidynema appendiculatumを人工的に感染させた場合)ヤマトゴキブリ後腸細菌叢について、16SrRNA V3–V4領域をターゲットとするメタゲノム解析をおこなった。いずれの寄生性線虫に感染した場合であっても、ヤマトゴキブリ腸内はBacteroidetes、Firmicutes、Proteobacteriaが優占しており、前回のクロゴキブリやワモンゴキブリと同様の結果であった。また、前回のワモンゴキブリと同様、寄生性線虫の自然感染あるいは人工感染により細菌種構成が変わることも示すことができた。BacteroidetesおよびProteobacteriaのOTUs値(%)は、Protrellus sp. に感染したヤマトゴキブリ(L1986)のほうが L. appendiculatumに感染したもの(L1987)よりも高く、FirmicutesのOTUs値はその逆であった。本寄生性線虫グループが宿主に与える影響について、今後より詳細に調べるための基礎データを示すことができた。