2018 年 48 巻 2 号 p. 63-70
日本各地で今なお被害が大きいマツ材線虫病は、近年寒冷地での被害拡大が顕著となっている。東北地方での被害量は全国のそれの30%ほどにも達している。年平均気温が12℃以下の各地では、7 ~ 8 月にマツノザイセンチュウに感染したアカマツ、クロマツは多くが翌年の春以降に枯死にいたる(年越し枯れ)。このような年越し枯れ木について、マツノザイセンチュウの材内個体数の動態を調査した。試験地を秋田県立大学構内のマツ林に設定し、枯死直後のマツを試験木として樹幹内のマツノザイセンチュウ個体数の経時的変化を調べた。枯死直後の線虫個体数は少なく、その後増加し、やがて減少する。このような動態は暖地(年平均気温14℃以上)における枯死木樹体内線虫の動態と一致するが、その個体数は少なく、大きな差が示された。枯死木樹幹内で線虫は集中分布していることを明らかにした。年越し枯れの試験木にはマツノマダラカミキリの産卵は全く認められなかった。