日本線虫学会誌
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研究資料
ソラノエクレピンAはジャガイモシストセンチュウの寄主探索因子として働くか?
坂田 至串田 篤彦奈良部 孝谷野 圭持
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2020 年 50 巻 1 号 p. 9-12

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抄録

線虫は宿主植物への寄生を確実にするため、植物との間に物質を介した様々な相互関係を築いている。ふ化促進物質もその一つであるが、本物質が宿主根探索にも利用されている可能性が提唱されていた。本研究では、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis, Gr)のふ化促進物質であるソラノエクレピンAがGrふ化幼虫の寄主探索に用いられているかどうかを調査した。供試したソラノエクレピンAの濃度は、高いふ化率が得られる0.01~10 ppb とした。土を充填した角型シャーレの片側にジャガイモ根浸漬液もしくはソラノエクレピンA(0.01、0.1、1、10 ppb)を、反対側に溶媒のみを染み込ませ、中央からGrふ化幼虫を導入し、48時間後に幼虫の分布を調査した。その結果、片側にジャガイモ根浸漬液を処理した場合には、有意に多くの幼虫が浸漬液側に分布したが、ソラノエクレピンAを処理した場合には有意差は認められなかった。したがって、ソラノエクレピンAはGrふ化幼虫の寄主探索因子として機能しないと推察された。

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© 2020 The Japanese Nematological Society
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