日本においては、タバコシストセンチュウは1998年に一度だけ発生しており、ナス栽培温室1棟で検出されたのみである。本種については、Globodera tabacum tabacum、G. tabacum solanacearum、G. tabacum virginiaeの3亜種が存在するが、上記日本産個体群(以下、Gt-j)の亜種については未同定のままであった。そこで本研究では、ペクチン酸リアーゼをコードする遺伝子の塩基配列における亜種間差およびCLE ペプチドをコードする遺伝子のPCR-RFLP法によって、Gt-jの亜種判別を試みた。2つのCLEペプチド遺伝子(Cle1およびCle5)のPCR-RFLP法の結果、Gt-jの断片パターンはG. tabacum tabacumのものと一致した。また、ペクチン酸リアーゼ遺伝子の1つであるPel1遺伝子の部分配列を比較した結果、Gt-jの配列はG. tabacum tabacumの配列と99%以上の相同性を示した。これらの結果から、Gt-jはG. tabacum tabacumであると同定した。