1974 年 4 巻 p. 13-19
キク産地でみられる大雨後のキクの急性的な萎ちょうの原因を明らかにするため, ネグサレセンチェウの密度を異にする土壌にキク3品種を栽培し, 生育中期に一定期間湛水した。
萎ちょうは湛水後短期間で発生し, 滅菌土壌や無線虫区でも発生がみられたが, 線虫区では萎ちょうの発生が早く, その程度も強い傾向がみられた。
現地の萎ちょう株より分離した3属の土壌菌について, 線虫と混合接種を行なったが, 菌によるキクの萎ちょうや生育抑制の影響は明らかでなかった。
萎ちょうの発生に先行して根の全面的な褐変がみられ, 萎ちょう4日目には下葉の黄化が進み, 8日目で萎ちょうはピークに達し, 以後枯死または回復に向った。この発生経過は現地の萎ちょうの経過と一致した。
これらのことから, 大雨後の萎ちょうは湿害であり, 線虫が湿害の誘因になるものと考えられた。
線虫によるキクの生育抑制は生育全般にみられるほか, 開花期の遅れや, 葉の脈間の黄化もみられ, またカリの含有率の低下が認められた。