日本線虫研究会誌
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クリの立枯症 (仮称) とその根から検出されるPseudhalenchus anchilisposomus Tarjan
山本 公志
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1974 年 4 巻 p. 20-26

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抄録

1)福井県におけるクリの立枯症は1966年ころから発生し, 現在は各栽培地で10~40%の発生樹率である。
2)立枯症樹は, 樹勢が弱く, 葉が黄化落葉し枯死する。幹の地際部附近は褐変することが多い。根は, 細根が少なく黒褐色に腐敗している。これら症状は根の腐敗が先行し, 根には菌根がないか, 極めて少ない。
3)立枯症はクリの幼樹にはみられず, 5~8年生の樹に発生が多い。
4)1969年10月, 福井農試嶺南分場の農場で, クリ園に発生している立枯症樹の根からPseudhalenchus属線虫を発見し, P. anchilisposomus Tarjan, 1958と同定した。さらに県内6か所から検出された線虫についても同一種であることが確かめられた。
5)本線虫の垂直分布は地表下100cmにおよび, その密度は概して20~50cmのところに高かった。水平分布は樹幹から0.5~1.5mのところに多かった。
6)立枯症が進むほど本線虫の密度が高い傾向があった。また,軽度の症状樹でその症状が回復に向うと線虫の密度は減少する傾向がみられた。
7)本線虫の湿熱に対する致死温度は55℃10分間であった。
8)本線虫はBotrytis cinereaおよびSolerotinia sclerotiorumでよく増殖した。また, 高圧滅菌したクリの細根によっても増殖した。
9)本線虫はクリの根の幼根部に僅かながら侵入することが認められた。

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