抄録
L. martiniによって伝搬されるクワ輪紋ウイルス (MRSV) の伝染源植物の検索ならびに線虫によるウイルス伝搬の様態について試験を行いつぎの結果が得られた.
1) クワモザイク病株からウイルスを保毒したL. martiniを含む土壌に20科54種の植物を植えて, 線虫によるクワ輪紋ウイルスの伝染源植物 (感染植物) を調査した. その結果本線虫は前報のイチジク, ブドウ, トマト, ナスのほかタバコ, ペチュニアに寄生し増殖したが, これらの植物にはMRSVの伝搬は認められなかった. またMRSV感染カウピー葉を用いて汁液接種により同ウイルス感染植物を検索したところ, 4科11種の植物に感染が認められたが, これらの植物には本線虫は寄生せず, 線虫によってMRSVの感染を受ける植物は, クワ以外にはなかった.
2) 保毒したL. martiniのMRSV伝搬性は, 2・3齢期幼虫の脱皮によつて失われた.
3) 無寄主状態においた保毒線虫のウイルス伝搬性保持期間は, 室温 (0~28℃) では, 13か月, 0~9℃では18か月, 20~24℃では3か月と病土の保存条件によって変動したが, 線虫の生存期間中持続するものもあるようであった.
4) L. martiniによるMRSVの伝搬は1頭接種でも可能でありクワに発病をもたらした. また2・3齢期幼虫と成虫との伝搬力に差はみられなかつたが, 艀化幼虫によるMRSVの伝搬は認められなかった.
5) 本線虫によるMRSV伝搬の最短接種吸汁期間は, 本調査の方法では, クワと線虫を10日間接触させた場合にモザイク病の発病がみられた. また連続移し変え接種試験においては7日間でも発病がみられた.