日本線虫学会誌
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Pasteuria penetransのサツマイモネコブセンチュウの密度抑制及びミニトマトの被害軽減効果
霞本 隆徳池田 るり子川田 弘志
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1993 年 23 巻 1 号 p. 10-18

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抄録

サツマイモネコブセンチュウの天敵微生物P.penetransを0、104、3×104、105、3×105、106/g土の密度でサツマイモネコブセンチュウ棲息土と混和し、ワグネル1/10,000aポットに入れ、トマト (品種: プリッツ) を連続3回栽培した時の土壌中の線虫密度の変化を人工気象器内 (25℃) で調査した。
1) ポット内の線虫密度は、106個/g土のP.penetrans胞子を施用した場合にのみ、1作目終了時から初期密度以下に抑制された。105、3×105個の胞子施用では、2作目終了時に初期線虫密度まで減少し、その後は増加しなかった。104及び3×104個の胞子施用区では、3作目終了時になって初期線虫密度まで減少した。
2) 土壌中の線虫数の減少は、P.penetrans胞子の線虫への付着状況と相関があり、前作終了時にほとんどの線虫にP.penetrans胞子が付着していた場合に、次作において土壌中の線虫密度は低下した。
3) トマト根の線虫被害は、作を重ねるにつれて線虫密度が低下したため、段階的に軽減された。
4) P.penetrans胞子の生産量は土壌中のP.penetrans胞子密度と寄生植物への線虫寄生数とのバランスで変動し、線虫被害軽減効果が現れてくると胞子生産量は減少した。
5) 以上のことから、P.penetransによる線虫害軽減効果は施用胞子量に依存し、線虫の増殖抑制により達成されると考えられた。

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