日本線虫学会誌
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マンゴーを加害するカミキリムシRhytidodera simulansに対するSteinernema carpocapsaeの感染性
近藤 栄造Rahman RAZAK
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1993 年 23 巻 1 号 p. 28-36

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抄録

マレーシアのマンゴーに大きな被害をもたらしているカミキリムシ (R.simulans) 幼虫に対する昆虫寄生性線虫S.carpocapsae (AII系統) の感染性を室内試験で調べた。[実験1] 円形濾紙を1枚敷いた直径6cmのペトリ皿にカミキリ幼虫を1頭づつ放飼した後に0.4mlの0.1%ホルマリン液に懸濁した感染態幼虫を10、100、1,000あるいは10,000頭の密度で接種し、マンゴー枝の粉砕物を5gづつ加えてから25℃に保った。その結果、1,000頭以上の接種密度で接種2日後から感染死亡が認められ、昆虫死体内での線虫の発育と増殖が確認された。その際、感染を免れたカミキリ幼虫は、ペトリ皿の壁面に沿って枝粉砕物を用いて坑道を作ったが、接種密度が1,000頭を越えると坑道形成前に死亡するものが増加した。[実験2] 長さ約20cmのマンゴーの切り枝の一端より長さ約10cmの人工的な坑道 (直径10mm) をあけ、この坑道に達する小孔 (直径3mm) を切り枝の側面につくった。このような人工坑道内にカミキリ幼虫を1頭づつ入れた後、坑道末端部を木片とパラフィンを用いて封じ、脱イオン水1mlに懸濁した線虫を小孔の周囲に噴霧ないし小孔から注入し、湿室に保った。その結果、カミキリ幼虫の死亡数は、供試虫数の1/6から1/2程度と少なく、また、線虫の施用方法や施用量とカミキリの死亡率との間に明瞭な関係は認められなかった。その原因を探るために人工坑道中におけるカミキリ幼虫の存在状態を調べたところ、坑道内に蓄えられたプラス量が多く、小孔から幼虫存在部位までの距離が長くなるにつれて感染死亡率が低下する傾向が認められた。

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