抄録
Steinernema carpocapsae (Sc) とS.glaseri (Sg) について, 感染態幼虫 (IJ) のハチミツガ幼虫への先行感染がその後の線虫感染に及ぼす影響を25℃で調べた。ScのIJを50頭注入して先行感染を起こすと, 感染昆虫へのScおよびSgのその後の侵入率は, 非感染昆虫に比べて約50%低下した。Sgを先行感染させた場合, 感染直後から, 宿主昆虫へのScおよびSgの侵入率は著しく低下した。Xenorhabdus nematophilns (Scの共生細菌) 注入, X.poinarii (Sgの共生細菌) 注入および熱処理で死亡した昆虫への侵入率は, それぞれ, Scの場合で1.8%, 0%, 5.4%, Sgの場合で1.8%, 5.0%, 7.8%となり, 共生細菌感染で死亡した昆虫への侵入率がより顕著に低下した。この時の無処理生存昆虫への侵入率は, Scで16.8%, Sgで15.1%となり, 昆虫死体への侵入率より高かった (P<0.01)。宿主昆虫への侵入率は線虫の先行感染によって有意に低下し, Scの侵入率は, 未感染昆虫で12.3%, 既感染昆虫で5.3%となった。感染初期 (接種後6時間) における侵入線虫の雄性比も同様に低下し, 未感染昆虫で69.0%, 既感染昆虫で49.3%であった。これらの結果より, 共生細菌を有するSteinernema属線虫の感染で死亡した昆虫体は, その後の線虫侵入を抑制する物質を出しているものと推察された。