日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
総説
CKD患者におけるシックデイ・ルールの臨床応用に向けた現状と課題
等 浩太郎 田中 章郎安田 宜成
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2024 年 13 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

CKDや心疾患を有する患者、あるいはrenin-angiotensin(RA)系阻害薬や利尿薬、non-steroidal anti-inflammatory drug(NSAIDs)などの薬物を服用している患者では、AKIのリスクを回避するため、シックデイ(発熱、下痢、嘔吐があり脱水が疑われる状態)には腎排泄性薬や腎障害性のある薬物の一時休薬や減量を検討することが提案されている(シックデイ・ルール)。2023年6月にわが国のガイドラインにおいてCKD患者のシックデイ・ルールと、シックデイにおいて一時休薬すべき薬物が具体的に示されたことで、今後シックデイ・ルールに基づいた患者教育の実践が拡大していくと考えられる。一方で海外においては2016年以降、CKD患者におけるシックデイ・ルールの臨床応用に向けた取り組みについての報告がなされはじめている。本総説ではこれら過去の報告を年代とテーマごとにまとめ、1. CKDシックデイ・ルールの作成と普及に関する研究、2. CKDシックデイ・ルールの実践と患者教育に関する研究、3. CKDシックデイ指導の介入研究として、それぞれの取り組みの内容を紹介するとともに問題点について考察を加えた。ガイドラインやエキスパートオピニオンに基づいてAKIリスクの高い患者に対するシックデイ指導が各国で実践されてきたが、シックデイ・ルールの曖昧さ、医療従事者ならびに患者の教育不足や連携不足によって、現時点ではその有用性を明らかにした研究は存在しないことが示された。過去の研究の成果を踏まえて、CKDシックデイ・ルールの臨床応用に向けて、1. シックデイ・ルールを適用すべき患者の選定、2. 職種間の連携強化と役割の明確化、3. 理解度に応じた患者教育の実践、4. 指導後のフォローアップの実践などが課題として挙げられると考えた。

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