日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
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総説
  • 等 浩太郎, 田中 章郎, 安田 宜成
    2024 年 13 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/07
    ジャーナル 認証あり

    CKDや心疾患を有する患者、あるいはrenin-angiotensin(RA)系阻害薬や利尿薬、non-steroidal anti-inflammatory drug(NSAIDs)などの薬物を服用している患者では、AKIのリスクを回避するため、シックデイ(発熱、下痢、嘔吐があり脱水が疑われる状態)には腎排泄性薬や腎障害性のある薬物の一時休薬や減量を検討することが提案されている(シックデイ・ルール)。2023年6月にわが国のガイドラインにおいてCKD患者のシックデイ・ルールと、シックデイにおいて一時休薬すべき薬物が具体的に示されたことで、今後シックデイ・ルールに基づいた患者教育の実践が拡大していくと考えられる。一方で海外においては2016年以降、CKD患者におけるシックデイ・ルールの臨床応用に向けた取り組みについての報告がなされはじめている。本総説ではこれら過去の報告を年代とテーマごとにまとめ、1. CKDシックデイ・ルールの作成と普及に関する研究、2. CKDシックデイ・ルールの実践と患者教育に関する研究、3. CKDシックデイ指導の介入研究として、それぞれの取り組みの内容を紹介するとともに問題点について考察を加えた。ガイドラインやエキスパートオピニオンに基づいてAKIリスクの高い患者に対するシックデイ指導が各国で実践されてきたが、シックデイ・ルールの曖昧さ、医療従事者ならびに患者の教育不足や連携不足によって、現時点ではその有用性を明らかにした研究は存在しないことが示された。過去の研究の成果を踏まえて、CKDシックデイ・ルールの臨床応用に向けて、1. シックデイ・ルールを適用すべき患者の選定、2. 職種間の連携強化と役割の明確化、3. 理解度に応じた患者教育の実践、4. 指導後のフォローアップの実践などが課題として挙げられると考えた。

原著
  • 三宅 瑞穂, 古久保 拓, 吉田 拓弥, 田中 梨惠, 小田 智子, 橋本 湖澄, 藤田 千佳, 和泉 智, 岡﨑 久宜, 乗峯 京子, 庄 ...
    2024 年 13 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/07
    ジャーナル 認証あり

    レムデシビル(RDV)は、現在、安全性の懸念から重度腎障害患者への投与が推奨されていない。一方で、いくつかの研究において、透析患者に常用量で適用が可能であることが示されている。

    本研究では、投与期間中の重篤な有害事象の発現状況を調査することにより、RDVを常用量で適用可能かどうか評価した。

    対象はRDVで加療した164名の透析患者とした。患者背景は、72 [29-97] 歳、男性113名(68.9%)、SARS-CoV-2ワクチン未接種22名(13.4%)であった。対象は2021年5月から2022年11月に入院時に軽度から中等度のCOVID-19に罹患していた。RDVは初日に200mg負荷後、以降は連日100mg投与した(透析日の場合は透析後に投与)。投与期間中の過敏反応および肝機能障害の発現状況を調査した。

    投与開始後10日以内にCOVID-19の重症度が悪化した患者はいなかった。過敏反応は12名(7.3%)に認められ、8名は初回投与時であり、1名は皮疹が出現しRDVの投与を中止した。注射部位反応は7名(4.3%)に認められたが、治療中止には至らなかった。肝機能検査で異常が疑われた患者は8名(6.3%)確認されたが、治療の必要はなかった。1名は投与3日目にPT-INRが上昇したためRDVの投与を中止した。

    本研究により、透析患者はRDVを標準用量で適用可能であるが、腎機能正常患者と同様に過敏反応や肝機能検査のモニタリングは必要であることが示された。

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