日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
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原著
  • 井上 咲那, 岡田 直人, 伯野 大樹, 高砂 美和子, 北原 隆志
    原稿種別: 原著
    2025 年14 巻3 号 p. 395-402
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/21
    ジャーナル 認証あり

    腎性貧血は、生活の質の低下や生命予後の悪化と関連しており、腎性貧血の治療は腎機能低下患者において重要である。新規腎性貧血治療薬である低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬の開始時は、鉄欠乏評価に基づいた鉄補充が推奨されている。しかし、鉄欠乏評価に基づく鉄補充とHIF-PH阻害薬によるヘモグロビン(Hb)上昇作用との関連は未だ知見が乏しい。本研究は、HIF-PH 阻害薬開始時の鉄欠乏評価に基づく鉄補充の有無とHb上昇との関連を解析した。2020年6月1日から2023年9月30日に山口大学医学部附属病院においてHIF-PH 阻害薬が開始された患者を対象とし、HIF-PH阻害薬開始前の鉄欠乏をフェリチン値とトランスフェリン飽和度で評価した。対象患者を鉄欠乏群と非鉄欠乏群に群分けし、両群における鉄補充の有無とHIF-PH阻害薬開始12週後のHb 値変化との関連を解析した。鉄欠乏群(n=33)において、鉄補充患者における12週間後のHb上昇値の中央値は3.1 g/dLであったのに対し、鉄非補充患者では1.6 g/dLであり、鉄補充患者で有意にHbが上昇したが(p=0.026)、Hbが管理目標基準値を超える患者も鉄補充患者で有意に多かった(p=0.039)。一方で、非鉄欠乏群(n=10)では鉄補充の有無によるHb上昇値に差はなかった。本解析により、HIF-PH阻害薬の造血効果を適切に得るためには、HIF-PH阻害薬開始前の鉄欠乏評価に基づき鉄補充を行うことが重要であり、鉄欠乏患者に対して鉄補充を行う場合は、Hb値の目標管理上限を超えないよう定期的なモニタリングが必要であることが示された。

  • 髙田 昂輔, 岡田 貴裕, 縄田 修一
    原稿種別: 原著
    2025 年14 巻3 号 p. 403-410
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/21
    ジャーナル 認証あり

    【背景】ラムシルマブ(ramucirumab: RAM)は、VEGFR-2に対するモノクローナル抗体であり、腫瘍血管新生を阻害する分子標的薬である。RAM投与により蛋白尿が発現・増悪することが知られており、その発症は治療の中断につながる可能性がある。しかし、RAM投与後に尿蛋白定性検査が2+以上増悪する患者のリスク因子に関する報告は少ない。そこで本研究は、RAM投与後に尿蛋白定性検査が2+以上増悪するリスク因子を明らかにすることを目的とした。

    【方法】2015年4月から2022年3月までに昭和大学横浜市北部病院および昭和大学病院でRAMが投与された患者を対象に後方視的解析を行った。RAM初回投与前後の尿蛋白定性検査に基づき、「2+以上増悪群」と「増悪なし/1+増悪群」に分け、単変量解析および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。

    【結果】解析対象155人のうち34人が「2+以上増悪群」に分類された。多変量解析の結果、説明変数として初回RAM投与前の収縮期血圧140 mmHg以上、前治療としてベバシズマブ(bevacizumab: BV)投与歴あり、およびカルシウム拮抗薬の内服ありを選択したモデル1では、血圧140 mmHg以上(オッズ比3.50、p = 0.006)および BV投与歴あり(オッズ比2.60、p = 0.038)が尿蛋白定性検査2+以上増悪のリスク因子として有意に関連した。また、収縮期血圧が高値であるほど蛋白尿の増悪割合が高かった(p = 0.001)。

    【結論】RAM投与後の蛋白尿2+以上増悪のリスク因子として、初回RAM投与前の収縮期血圧高値が示唆された。また、モデル1ではBV投与歴もリスク因子として示唆された。以上より、RAM投与前の血圧管理の重要性や、BV投与歴のある患者に対する注意深いモニタリングの必要性が示唆される。本研究の結果は、リスクの高い患者に対する治療選択の一助となる可能性がある。

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