日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
総説
漢方方剤冠元顆粒が糖尿病性腎障害への進展を改善―LLC-PK1細胞とdb/dbマウスを用いた検討―
岡本 拓也朴 鑽欽瀬井 康雄川添 和義横澤 隆子
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 7 巻 3 号 p. 171-180

詳細
抄録

冠元顆粒は、多彩な生理活性を有し、かつ毒性や副作用がないことから、多くの報告がなされている。我々は、糖尿病性腎障害モデル実験より、冠元顆粒が糖尿病腎に対する治療の証拠を得たので、ここに報告する。まず、腎近位尿細管由来の上皮細胞株のLLC-PK1細胞を用いた実験において、高グルコースでひき起こされる酸化ストレス状態を、冠元顆粒添加群で改善する知見が得られた。さらに、2型糖尿病モデルのdb/dbマウスに、冠元顆粒を投与した腎組織中の終末糖化産物や線維症関連蛋白が低下していた。酸化ストレスや炎症に関与する蛋白発現も低下し、腎糸球体の肥大を改善し、2型糖尿病マウスの腎に好影響を及ぼしていた。このことから、冠元顆粒は腎保護作用を示し、糖尿病性腎症への進展を抑制する証拠が示され、それらはまた多系統段階で効能を発揮していることが示された。

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
次の記事
feedback
Top