2018 年 7 巻 3 号 p. 191-200
関西電力病院医薬品情報室では薬学的介入の質向上を目指し,2014年2月よりデータウェアハウスを用いて腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当する症例を検出するシステム(システム)を構築し活用している。今回その活用状況と課題について検討した。対象は入院患者で,Cockcroft-Gault式により求めたクレアチニンクリアランス(creatinine clearance:Ccr)が検索時点から過去1ヶ月間に60mL/min未満であった患者を検出し,Ccr<10mL/min,Ccr<30mL/min,Ccr<60mL/minの3群に分けた。各群で腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当する薬剤(検索対象薬剤)の処方がある症例を検出し,病棟薬剤師と検出した症例への対応方法について協議した。疑義のある症例に対しては医師に処方変更の提案をおこなった。システムにより検出された腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当した症例は104件であった。医薬品情報室と病棟薬剤師と協議の結果,医薬品情報室から医師へ処方変更の提案をおこなった症例は41件(39.4%)であり,そのうち処方変更となった症例は24件(58.5%)であった。処方変更に至らなかった症例は,病棟薬剤師や医師とその妥当性について協議し,検査項目の追加やTherapeutic Drug Monitoring(TDM)の実施,他科への併診依頼等をおこなった。我々の構築したシステムは,腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当する症例を機械的に検出し,病棟薬剤師や医師と連携して処方内容の適正化及び薬物療法の安全性の向上に寄与している点で有用であると考える。課題として,検索対象薬剤を検出する境界値の設定が病棟薬剤師や医師の判断基準と乖離があること,検索対象薬剤の処方を未然に防げないこと等が考えられた。