鳥類において,発声器官の形態の違いは,鳴き声に含まれる周波数成分の違いを生む.ハシボソガラスCorvus coroneとハシブトガラスC. macrorhynchosの鳴き声は異なるため,発声器官の形態も異なっていると考えられる.そこで本研究では,ハシボソガラスとハシブトガラスにおける鳴き声の音響的性質と発声器官の形態を比較した.その結果,ハシボソガラスの鳴き声の最大振幅点における最大音圧周波数,最高周波数が,ハシブトガラスに比べ有意に高い値を示した.また,ハシボソガラスの露出嘴峰長と鳴管はハシブトガラスに比べ,顕著に小さかった.発声器官が小さければ,周波数成分より高周波数域に現れるため,露出嘴峰長と鳴管の大きさの違いが両種の出現周波数域の違いを生んだと考えられる.