日本鳥学会誌
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最新号
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巻頭言
原著論文
  • 高橋 佑亮, 神山 和夫, 牛山 克己, 鈴木 透, 嶋田 哲郎
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 73 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル 認証あり

    国内7か所のガンカモ類の集団飛来地において,ガンカモ類の群れに向かって様々な高度でドローンを水平に接近させる試験と,群れの真上から垂直に接近させる試験を行い,ガンカモ類の反応を調査した.また,離陸したドローンに対するガンカモ類の反応と,離陸地から群れまでの距離の関係を解析した.その結果,飛行高度が低いほど,また近距離で離陸させるほど逃避が生じる傾向があることが示唆された.群れの大きさについては,本研究ではガンカモ類の逃避反応の有意な要因であるとは言えなかった.逃避が見られた機体高度や機体離陸地から群れまでの距離を水面と陸上で比較した結果,マガンAnser albifronsでは有意差が認められ,陸上の群れを対象に調査する場合,水面の群れよりも遠方から,より高い高度でドローンを飛行させる必要があることが示唆された.また,鳥種で比較した結果,カモ類はマガンやハクチョウ類に比べ,接近するドローンから逃避せずにその場に留まる群れが多いことが示唆された.群れの撹乱リスクが小さい飛行高度で,概ね調査目的を達成できる画像解像度が得られることから,ドローンはガンカモ類の調査に活用可能なツールであると考えられた.

  • 上條 初音, 佐々木 美空, 三上 かつら, 三上 修
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 73 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル 認証あり

    ヒバリAlauda arvensisは,主に繁殖期に,さえずりながら高く飛翔をするさえずり飛翔を行う.このさえずり飛翔について,到達最高高度や飛翔時間については調べられているが,上昇していく途中に行う輪を描くようにとぶ旋回飛翔については定量的な記録がほとんどない.そこで本研究では,旋回飛行の基本情報を得ることを目的とした.北海道七飯町で60秒以上のディスプレイフライトを125回観測した.その結果,サークリングフライト時間の度数分布は,右裾が長い逆J字型をしており,中央値は3.67回であった.風速が大きくなるにつれて,旋回飛行の頻度は減少した.風速が速い場合,ヒバリは円形に飛行せず,風に向かって飛行する時間が長くなった.旋回飛行の方向は,上から見て時計回りになることが統計的に有意に多く,個体や集団レベルで旋回飛行に左右性がある可能性を示唆している.

  • 高橋 佑亮, 東 淳樹
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 73 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル フリー

    農耕地帯で繁殖するチュウヒCircus spilonotusにとってどのような環境が狩り場として重要であるか,資源選択性に基づき評価した.秋田県八郎潟干拓地の営巣地周辺において本種の狩り行動を観察し,獲物の捕獲を試みた地点の環境タイプを記録した.この捕獲試行地点と,地図上で生成したランダム地点をデータとし,狩り場としての利用の有無と環境タイプの関係を,一般化線形モデルを用いて解析した.その結果,採草地,麦畑,幹線用水路や小排水路沿いに見られる草地が,本種の狩り場として有意に選択される環境タイプであることが示された.これらの環境タイプは,ハタネズミMicrotus montebelliまたはカエル類の生息密度が比較的高かった.また,最大草高(4期の中央値)が概ね1 m以下であり,ヨシ原のように高くはなく中間的な高さであった.一方,水田はハタネズミ,カエル類および鳥類の生息密度が低く,営巣地の周辺に豊富に存在するにもかかわらず,本種の狩り場としてほとんど利用されなかった.このように,獲物となる動物が多く,狩りに適した植生構造となっている草地(農作物を含む)が,チュウヒの狩り場として重要な環境と考えられた.

  • 岩崎 真由, 安積 紗羅々, 石塚 真由美, 池中 良徳, 綿貫 豊
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 73 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    鳥類の羽根は水銀汚染のモニタリングによく使われる.育雛期の営巣場所に着地していたオオミズナギドリCalonectris leucomelas成鳥の血球と羽根の水銀濃度を測定した.育雛期の血球と採血の時に伸長中だった体幹部の羽根の水銀濃度はオスの方がメスより高かったが,おそらく,それぞれ繁殖期前半と繁殖後の渡りから越冬初期に換わったと考えられる胸の羽根と初列風切羽根P1では性差は見られなかった.採血の時に伸長中だった体幹部の羽根の水銀濃度は血球の水銀濃度でよく説明できたが,採血とは別の時期に伸長したP1と尾羽根R6の水銀濃度は血球水銀濃度とは関係はなかった.水銀濃度は,胸の羽根および体幹部の伸長中の羽根で高く,次がP1であり,R6で最も低かった.本研究は,換羽中の羽根の水銀濃度は血中水銀濃度と平衡することを明らかにし,さらに産卵や換羽による水銀排出の季節変化を反映しているかもしれないことを示唆する.また,繁殖期間内に換羽した羽根の水銀濃度と越冬期間内に換羽した羽根の水銀濃度の間には相関はなく,各個体の羽根の水銀濃度には年を通じた一貫性はないらしいことが示された.

  • 中嶋 千夏, 塚越 優喜, 大門 純平, 西沢 文吾, 向峯 遼, 庄子 晶子
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 73 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル 認証あり

    鳥類の換羽は飛行機能や体温調節機能の維持のために行われる.海鳥は,繁殖期または非繁殖期に換羽を行うが,特に非繁殖期に換羽する種は繁殖地から離れて海上で換羽を行うため追跡が困難である.従来の研究では標本や混獲,異常気象による大量死で打ち上げられた死体などの限られたサンプルを利用して換羽時期の推定を行なっていたため,換羽の研究は不足しており,換羽時期が不明な海鳥が複数種存在している.様々な研究に応用可能な生態データである換羽時期に関する知見を増やすため,新たな換羽時期推定の手法開発が急務である.そこで本研究では,ウミスズメ科鳥類のウトウCerorhinca monocerataとエトピリカFratercula cirrhataの初列風切羽の換羽について,インターネット上で公開されている画像データを収集し,初列風切羽の換羽状況を調べた.さらに北海道天売島において繁殖中のウトウ親鳥の捕獲調査を行い,初列風切羽の換羽状況を記録した.これらの結果により,ウトウは7月から9月,エトピリカは8月から少なくとも9月まで換羽を行うことが推定された.また,天売島でのウトウを用いた野外調査では繁殖期間内に換羽を行わなかったことから,少なくとも天売島のウトウ個体群は非繁殖期に換羽することが明らかとなった.本研究は画像データを用いた手法が換羽時期推定に有用であることを示し,画像データの活用の幅を広げた.

  • 永谷 奈央, 新妻 靖章, 綿貫 豊
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 73 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル 認証あり

    成長中の雛の代謝速度は体重,成長速度,日周性,栄養状態などによって影響される.安静時代謝速度(RMR)が変化する要因を明らかにするため,成長速度が遅く夜間に給餌されるウトウCerorhinca monocerataの雛におけるRMRを,2021年に様々な日齢(体重)で夜間と日中に呼気ガスチャンバー法によって調べた.RMRは体重とアロメトリー関係にあり,アロメトリー指数は0.47と鳥類の雛の中でも比較的小さく,成長の遅い種の指数に近かった.また,夜間のRMRが昼より低かったことと,体重補正したRMRがほかのウミスズメ科の雛より小さかったことは,それぞれ短期的絶食状態と長期的な餌不足を反映するのかもしれない.

  • 加納 歩実, 加藤 楓菜, 橋本 啓史, 日野 輝明
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 73 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,名古屋市におけるハシブトガラスCorvus macrorhynchosとハシボソガラスC. coroneの生息場所,高さ,ゴミの利用の違いを調べた.観察された個体数は,ハシボソガラスがハシブトガラスより1.2倍多かった.両種とも道路や住宅地の多い地域で個体数が多かったが,ハシボソガラスはハシブトガラスよりも緑地,湿地,農地など自然度の高い場所をよく利用していた.両種とも1015 mの高さで最も頻繁に観察されたが,ハシブトガラスは15 m以上,ハシボソガラスは10 m以下の高さでより頻繁に観察された.カラスによるゴミ荒らしはネット型の収集所で最も頻繁に観察され,その頻度はハシブトガラスよりもハシボソガラスで高かった.本研究で得られた名古屋市におけるハシボソガラスの個体数,生息場所,ゴミの利用についての結果は,市街地に河川が多く流れ,周辺に農地が広がっていることが関係している可能性がある.

短報
  • 佐藤 叶佳, 八木橋 明華里, 三上 修
    原稿種別: 短報
    2024 年 73 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2024/05/24
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル 認証あり

    ハシボソガラスCorvus coroneがオニグルミJuglans mandshuricaを割る際には,高いところから投下するか,道路上にクルミを置いて車が轢くのを待つという行動をとる.ハシボソガラスが,この2つのどちらの行動をとるか意思決定をする際にクルミの硬さは重要な要素だろう.既存の投下実験によりクルミは季節が進むにつれて割れやすくなることが分かっている.もしハシボソガラスがそのことを認識しているならば,季節が進むにつれてより投下によって割る行動を増やすと推測される.そこで北海道函館市において,10月から翌年1月までハシボソガラスによるクルミ割り行動を観察した.その結果,推測通り投下によってクルミを割る行動が観察される比率が増えていた.

観察記録
その他
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