日本鳥学会誌
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原著論文
  • 猿舘 聡太郎, 雲野 明, 松井 晋
    原稿種別: 原著論文
    2025 年74 巻2 号 p. 223-241
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/12/06
    ジャーナル フリー
    電子付録

    クマゲラDryocopus martiusは森林生態系において重要な役割を担う希少種であり,積雪により採餌環境が制限される冬期にのみ生立木の樹幹を掘って採餌する習性をもつ.積雪地帯で活動する鳥類において,冬期の採餌場所選択が生存に深く関与するため,冬期の採餌場所や広域での生息適地を明らかにすることは,クマゲラの生息環境の保全を進める上で重要である.そこで,札幌市の山域において,クマゲラが冬期に採餌場所として利用する生立木の採餌木選択と採餌場適地に関する調査を行った.結果,低地の森林で大径木を採餌場所として利用し,周辺環境としては針葉樹割合が高く,針葉樹の立枯れ木が多い特徴が見られた.Manlyの選択性指数を用いた樹種選択の解析より,本州から北海道に導入されたカラマツLarix kaempferi,先駆樹種であるシラカンバBetula platyphylla が冬期採餌木として有意に選好された.潜在的な冬期の採餌場所を推定する MaxEnt による解析では,標高が低く,カラマツ林割合が高い,傾斜の緩やかな,より湿潤な地形で冬期の採餌場適地確率が高くなった一方で,北向き斜面はその他の斜面方位に比べて冬期の採餌場適地確率が低下した.本調査地では,都市部に隣接したカラマツの人工林を含む成熟した低地林がクマゲラの冬期採餌場所として重要であることが示唆された.よって,低地の成熟した森林の保全は,クマゲラの冬期の採餌場所の保全に重要な役割を果たす可能性がある.また,大径木や立枯れ木といった生物多様性の維持に重要な構造を含むクマゲラの冬期の採餌場適地を把握することは,生物多様性の高い場所の効率的なゾーニングにつながることも期待される.

  • 市原 晨太郎, 小林 朋道
    原稿種別: 原著論文
    2025 年74 巻2 号 p. 243-255
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/12/06
    ジャーナル 認証あり

    窓ガラスへの衝突が鳥類に及ぼす影響は,その保全を考える上で無視できないものであり,効果的な対策の普及が急務である.本研究では,鳥取県鳥取市にある公立鳥取環境大学の構内において,鳥の窓ガラス衝突の実態調査を行った.その結果,3年と2か月間で16科20種,65個体の衝突を記録した.衝突は6月から7月のメジロZosterops japonicusの事故が特に多かった.衝突には,周辺環境などのさまざまな要因が関与していると考えられた.さらに,紫外線カットフィルムを使用した対策の効果を調べるため,野外実験を行った.その結果,フィルムを窓に設置した場所では,衝突が有意に抑制された.

  • 谷口 裕紀, 小池 重人, 田悟 和巳, 柏原 聡, 大坪 二郎, Anders P. TØTTRUP, 樋口 広芳
    原稿種別: 原著論文
    2025 年74 巻2 号 p. 257-270
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/12/06
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    日本で絶滅が危惧されているチゴモズ Lanius tigrinus 3個体にジオロケーターを装着し,渡り経路を追跡した.秋の渡りは3個体のデータが得られ,いずれも繁殖地から本州を西に進み,大陸を南下した後,3 個体ともインドシナ半島東部を通過し,ボルネオ島で越冬した.インドシナ半島東部とボルネオ島は,それぞれ重要な渡りの中継地,越冬地であると考えられる.春の渡りは 1 個体からデータが得られ,同個体の秋の渡り経路を戻るように琉球諸島を通過し,繁殖地へ戻った.本研究は,事例数は限られているものの,日本で繁殖するチゴモズの渡りの経路や具体的な中継地,越冬地を推定した最初の報告である.

  • 佐藤 ひろみ
    原稿種別: 原著論文
    2025 年74 巻2 号 p. 271-284
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/12/06
    ジャーナル 認証あり

    千歳川遊水地群に飛来するマガンAnser albifronsとタンチョウGrus japonensisの羽数の推移,各遊水地の開水面の面積の推移と照合したマガンの羽数の変動,植生遷移に伴い生じたタンチョウの繁殖活動等の結果からグリーンインフラとしての千歳川遊水地群の存在意義を論じる.千歳川遊水地群が造成されてから,このエリアのマガンとタンチョウの飛来数は増加した.具体的には植生遷移により開水面の面積が減少した東の里,北島遊水地でマガンの羽数は減ったが,塒入り可能な舞鶴,根志越遊水地を選択し数万羽のマガン群が飛来していた.植生遷移が進み水場やヨシなど含む湿地ができて,タンチョウは適するヨシ原が無い根志越遊水地を除く舞鶴,東の里,北島,江別太,晩翠遊水地で繁殖活動等していた.

短報
  • 萩原 陽二郎, 小村 健人, 田悟 和巳, 時田 賢一, 樋口 広芳
    原稿種別: 短報
    2025 年74 巻2 号 p. 285-290
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/12/06
    ジャーナル 認証あり

    静岡県遠州地方において捕獲したミゾゴイ Gorsachius goisagi の幼鳥に,太陽電池方式のアルゴス送信機を装着し,渡り経路を推定した.対象個体は,種子島南側を移動してトカラ列島の中之島を通過した後,奄美大島北西約 160 km の位置まで移動し,ルソン島西側約 500 km の位置で再び測位された.その後,急激に進路を東側へ変え,フィリピンのルソン島西側の沖合まで移動した.この際,経路上で発生した熱帯低気圧の風況変化に伴い,移動経路を大きく変えた可能性がある.本報告は,ミゾゴイの渡りを追跡した最初の事例であるとともに,経路上で大きな気象変化に巻き込まれ進路を変えた可能性のある状況を把握した貴重な記録と言える.

  • 正富 宏之, 正富 欣之, 深澤 博
    原稿種別: 短報
    2025 年74 巻2 号 p. 291-298
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/12/06
    ジャーナル 認証あり

    日本のタンチョウGrus japonensis 個体群では,これまで亜成鳥による確実な繁殖例の記録はないに等しい.しかし,北海道中央域に造成された千歳川氾濫阻止用の東の里遊水地において,2023 年の繁殖期に,野生成鳥メスと 2 歳亜成鳥オスと判定した番いが,一連の繁殖活動でヒナ 1 羽を孵化させた.親は育雛活動を行ったが,ヒナは孵化 5 日ほどで所在不明となった.その後,番いは隣接の北島遊水地へ移り,6 月に再度産卵,抱卵を行った.卵は孵化しなかったが,亜成鳥を含む野生タンチョウ番いの孵化成功と一繁殖期内の再営巣は初記録であり,亜成鳥を含む雌雄 2 羽連れの出現に対し環境保全対策の重要性が提起されたことになる.なお,ヒナの消失原因は明確ではないが,アライグマの捕食による可能性が考えられるので,駆除を促進すべきである.

  • 渡辺 朝一
    原稿種別: 短報
    2025 年74 巻2 号 p. 299-311
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/12/06
    ジャーナル 認証あり

    日本列島の農耕地でも最大の面積を持ち,多くの鳥類の生息地となっている水田において,農閑期における田面耕起が水田面に生息する鳥種にどのような影響を与えているかを明らかにするため,利根川低地の水田 4 か所において2014年12月から 2015 年 2 月にかけて3回調査した.隣り合った非耕起水田と耕起水田の比較で,非耕起水田において鳥類の種類数,個体数とも多く記録された.農閑期における田面耕起は,水田面を生息場所とする鳥類に大きいマイナスの影響を与えていた.

観察記録
その他
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