抄録
日本において,スズメPasser montanusは家屋の隙間などの人工物に営巣することが知られているが,都市開発による家屋などの構造の変化により,スズメの営巣場所,巣の分布様式,そして繁殖成績まで,都市部と農村部で異なる可能性がある.本研究では,スズメの営巣場所,営巣場所の再利用回数,繁殖時期,巣の分布様式を地域間比較した.スズメは都市部では主に電柱の隙間に,農村部では主に家屋の隙間に営巣しており,両地域の営巣場所には有意な違いが見られた.都市部では農村部よりも1回多く繁殖ピークが見られた.両地域では再利用された営巣場所が見られ,再利用回数は農村部に比べて都市部の方が多かった.巣の分布様式は,都市部はランダム分布,農村部では集中分布を示した.人工物の量や質,分布といった営巣可能な場所の違いが,都市部と農村部における違いを産み,さらにはスズメの個体間の相互作用や繁殖成績にも影響を与える可能性がある.