日本鳥学会誌
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短報
クロアシアホウドリのヒナは中深層性動物を吐出した
岡 奈理子土屋 光太郎河野 博菊池 知彦丸山 隆
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2013 年 62 巻 1 号 p. 52-56

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抄録

 伊豆諸島鳥島(北緯30°29′02″東経140°18′11″)で,2000年5月中旬,巣立ち期に近いクロアシアホウドリPhoebastria nigripes(Audubon 1849)のヒナが吐出した胃内容物を採取し同定した.4羽すべてが中深層性の遊泳動物を吐出した.このうちイカ類はアカイカ科トビイカ属トビイカSthenoteuthis oualaniensis,ダイオウイカ科ダイオウイカ属,サメハダホオズキイカ科オオホオズキイカ属,ユウレイイカ科ユウレイイカ属,魚類はクロボウズギス科,エビ類はヒオドシエビ科アタマエビ属アタマエビNotostomus japonicusの成体であった.クロボウズギス科はクロアシアホウドリの胃内容物から初めて出現した.クロアシアホウドリの親鳥自らがこれらの中深層性の遊泳動物を自力で捕獲したとみるより,人間活動により投棄されたり,餌動物自らが潜水遊泳に長けた高次捕食者の採食活動や他の理由で死んで浮上したものを,採食した可能性が高いと考えられた.クロアシアホウドリが本来は採食機会がない中深層性の遊泳動物を採食していたことは,彼らが海洋のスカベンジャー,もしくは人間活動や他の高次捕食者の採食活動などに依存した採食ニッチを持つことを示す.

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