抄録
カワウPhalacrocorax carboのねぐらやコロニーの分布にアユPlecoglossus altivelisの放流が与える影響を明らかにするために,2006年から2008年の関東地域のカワウのねぐら・コロニーサイズと,その周囲20 kmの採食範囲でのアユ放流量の関係を調べた. 3月のカワウの総個体数は約14,000個体であった.アユ放流量は約120,000 kgで,これは,カワウ1個体あたり1日500 g 採食するとした場合の約17日分の資源量であった.このことからアユがカワウにとってある程度重要な食物資源になりうると考えられた.3月のねぐら・コロニーサイズを前年のアユ放流量で説明する一般化線形混合モデルを作成したところ,両者には関係がみられなかった.一方,3月から7月のねぐら・コロニーサイズの変化率と,ねぐらやコロニー毎の1個体あたりのアユ放流量との関係を説明するモデルを作成したところ,アユ放流量が多いねぐらやコロニーほどサイズが有意に増加した.以上の結果から,カワウはアユ放流量が多かった地域をねぐらやコロニー場所として選択しているわけではないが,繁殖期間中に周囲で多量のアユが放流されたねぐらやコロニーでは繁殖成績が向上したり移入個体が増加したりすることが示唆された.