2020 年 69 巻 1 号 p. 91-95
日本では,現在非常に多数のペンギンが飼育されている.このような状態になった理由を解明するため,ペンギンの渡来史を調べた.『禽譜』によれば,ペンギンの全身と部分の皮が,江戸時代の享保年間(1716–1736)と1821年に渡来し,どちらの種もキングペンギンAptenodytes patagonicusであった.筆者は,貴志孫太夫が転写したと考えられる『鳥獣図』に描かれたフンボルトペンギンSpheniscus humboldtiの図を見つけた.そして,その原図で写生されたフンボルトペンギン標本の渡来時期は,貴志忠美が没した1857年以前と推定できた.