日本鳥学会誌
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原著論文
泥中のレンコンはカモ類等の食害を受ける:実地試験による確認
益子 美由希山口 恭弘吉田 保志子
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2022 年 71 巻 2 号 p. 153-169

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抄録

全国一のレンコン産地である茨城県では,カモ類及びバン類による年間約3億円(2020年度)のレンコン被害が報告されている.レンコンは通年湛水のハス田の泥中に生育し,収穫時にえぐられた傷のあるレンコンが混じることがあるため「カモ被害」とされてきたが,実際にカモ類等が夜間に食害する様子を示した資料は無かった.どの種がどのようにレンコンを食べるか明らかにするため,2021年2–3月,収穫後のハス田(泥面は水面下約20 cm)に試験的にレンコンを設置し,カモ類等による夜間の採食行動を自動撮影カメラで撮影した.全16回の試験回毎に,2–4節ある新鮮なレンコンを日没前に田内(水面下0–52 cm,試験毎に深さを変更,園芸用支柱に結えて保持)又は畦上に設置し,翌朝に回収した.その結果,マガモAnas platyrhynchosとオオバンFulica atraがレンコンを食べる様子が頻繁に撮影され,まず畦上又は水面にあるレンコンを突いて食べ,完食すると次いで頭を水中に浸して水面下0–20 cmにあるレンコンを食べていた.その後,水面下20–40 cmの泥中にあるレンコンを倒立して食べ,途中,オオバンは潜水,マガモは水かきで泥を掘る動作も行った.翌朝,レンコンが食べられた範囲の泥面は水面下20–42 cmのすり鉢状に掘られており,水面下40 cmよりも深くにはレンコンが残っていた.他のカモ類の飛来は少なかったが,ヨシガモA. falcataは泥面のレンコンを,ヒドリガモA. penelopeは畦上と水面のレンコンを食べた.ハシビロガモA. clypeata,コガモA. crecca,オカヨシガモA. streperaはレンコンを食べる行動は見られなかった.以上から,泥中に着生する商品となるレンコンが少なくともマガモとオオバンによる食害を受けうることが示され,浅く位置するレンコンほど食害を受けやすいと考えられた.

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