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知床半島におけるホシガラスのハイマツ種子隠し場の観察
斎藤 新一郎
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1983 年 32 巻 1 号 p. 13-20

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抄録
(1)知床横断道路の切取り斜面で,ハイマツの実生の束生が観察された.実生は植被の疎な斜面上部に限られ,ミネカエデとトドマツにも束生がみられた.
(2)ハイマツの実生の束生は貯食型動物に由来するが,隠し場,隠し方,種子の運搬距離などから,ホシガラスによるものと推測される.
(3)切取り斜面上部は,ホシガラスが種子を取戻すためにも,ハイマツが成育するためにも好ましい場所である.知床横断道路では,ホシガラスによるハイマツの造林がかなり期待できるかもしれない.
(4)カエデ類やトドマツの有翼散布体も,形態的には風散布とみるが,ホシガラスなどによって鳥散布される可能性もある.したがって,鳥類が種子の隠匿貯蔵による森林の復元に果たす役割はかなり大きいと考えられる.
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