日本鳥学会誌
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キジバトの古巣利用におけるコスト
和田 岳
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1992 年 40 巻 2 号 p. 43-50

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抄録

京都においてキジバトStreptopelia orientalisの古巣を利用した繁殖について研究した.古巣が再利用された場合,以前と同じ繁殖結果が得られるかという仮説をその巣が再び利用されるまでの時間間隔を考慮して検討した.
新しく造られた巣と再利用された古巣との間に,繁殖結果の季節的傾向に違いはなく,どちらの巣においてもある種の繁殖の失敗(otherfailure)は7-10月に頻繁に生じた.
以前の繁殖がother failureであった巣が60日以内に再び繁殖に利用された場合,再びother failureが生じる傾向があった.一方,繁殖成功に関しては同様の傾向は見られなかった.また,巣が再び利用されるまでの時間間隔を考慮しなければ,同じ巣で同じ繁殖結果が再び生じるという傾向はなかった.Other failureの原因の多くは捕食であると考えられ,この結果は巣の捕食者が一度捕食した巣をある時間間隔内で再び訪れる傾向があるということを示唆していると考えられた.

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