抄録
食物選好性の実験では,数種類の食物を鳥に与え,24時間の消費量を比較する方法と絶食させた鳥に数種類の食物を短期間に与えて選好性を調べる方法がある.本研究は上記の二つの方法を用いて,捕獲したホンセイインコ(Psittacula krameri)の食物選好性と一日の食物消費量を調べた.実験には罠で捕獲した15羽のホンセイインコを用い,3種類の穀物,サトウモロコシ,トウモロコシとコメに対する選好性を調べた.実験1では,それぞれの鳥に3種類の穀物を5日間,別々の容器に等量与え,それぞれの穀物の消費量を翌朝に測定した.実験2では,実験1で用いた15羽を一晩絶食させ,1日2回,午前10時から11時までの1時間と午後3時から4時までの1時間に3種類の穀物を与え,5日間実験を行なった.
実験1では,サトウモロコシはトウモロコシやコメよりも有意に多く食べられたが,トウモロコシとコメの消費量には差がなかった(Table1).消費量による選好順位は15羽中の11羽でサトウモロコシが1位,トウモロコシ(14/15)が2位,コメ(5/15)が3位の順であった(Table2).コメ,サトウモロコシとトウモロコシの平均重量はそれぞれ22,28,247mgであり,サトウモロコシはコメとほぼ同量だが,後者より,またより大きいトウモロコシよりも好まれているから穀物の重量が食物選好性の目安になっていない.食物消費量は実験日によって有意に異なり,実験2日目がもっとも多く,4日目がもっとも少なかった(Fig.1).
実験2でも,3種類の穀物の消費量は有意に異なっていた(Table3).午前の消費量は他の2種類の穀物よりサトウモロコシは多く,トウモロコシが少なく,それぞれ有意差があった.午前の消費量は実験1の結果と同じであった.サトウモロコシが他の穀物より有意に多く食べられたが,コメとトウモロコシの消費量には差がなかった.また,1時間の1羽当たりの全消費量は午前より午後が有意に多かった.食物消費量は実験1日目から2日目に増加したが,3日目と4日目には減少し,5日目に再び増加した(Fig.2).午前は2,3,5日目の消費量には差がなかったが,1,4日目よりも有意に多かった.午後の消費量は2日目がもっとも多く,次は3日目で,1,4,5日目は有意に少なかった.
実験1と2では,3種類の穀物に対するホンセイインコの相対的な選好性に関して同じような結果を得た.両方の実験で各個体の食物選好性には高い相関があり,2つの実験の間に差がないことを示している.両方の実験では5日間の全食物消費のパターンは似ていたが,24時間の1羽当たりの消費量には有意差があった.鳥は絶食後に1日1時間ずつ2回食物を与えた時より1日中食物を与えた時により多くの穀物を食べた.1日の食物消費量は実験1では体重(平均114.3g)の12.2%,実験2では9.4%であった.未消費の穀物を選別する時間は実験1(1羽当たり15分)より実験2(2.7分)で有意に短かった.本研究は2つの実験方法により異なった食物に対する鳥の選好性に関して同様な結果を得たが,絶食法(実験2)では未消費の混じりあった異なる穀物の選別時間をより短縮できることが分かった.実験1では実験時間が長いため,穀物が鳥の糞によって湿ったり,汚れやすい.従って,飼育鳥による食物の選好性の実験には絶食法がこれまで一般的に行なわれてきた方法(実験1)より優れていると結論できる.
実験2では,1日2回の採食に対して鳥の条件付けを行なっていない,このことが5日間の全食物消費のパターンは両方の実験でよく似ていたが,全食物消費量は実験1より実験2で有意に少なかった理由の一つかも知れない.実験2における1日の食物消費量の過小評価と条件付けの関連については,今後研究すべきである.
本研究で得られたもう一つの興味ある結果は,実験2における午前と午後の食物消費量の相違である.夕方の食物消費量の増大は,鳥が採食せずに一晩を過ごさねばならないことからも予想できる.一般に,食物消費量が光周期や気温に依存していることはよく知られている.実験2では,昼と夜の平均気温はそれぞれ32.1°Cと15.3°Cであったので,夕方の消費量の増大は最後の採食後の絶食時間の長さと夜間の低温の結果であろう.
絶食法による午前と午後の観察から,食物選好性のパターンがよく似ていたので両時間帯が食物選好性の観察に共に適していることを示している.しかし,1日に1回だけ観察する場合には,鳥は午前より午後でより多く採食し,また選好性もより強いので,午後に観察すべきである.