抄録
北海道の低地落葉広葉樹林において,1993年から1995年にかけての春の渡り期に捕獲調査を行い,そのうち100羽以上捕獲された5種について,その数を時間帯ごとにまとめて比較した.捕獲にはHTX(30メッシュ×12m)のかすみ網を用い,高さは林床植生であるササとほぼ同じ約1.8mに統一した.その結果,まず,各種について捕獲数のピーク時期にそれぞれ差のあることが知られた.次いで,4種(ルリビタキ,ヤブサメ,ウグイスおよびアオジ)については,A時間帯(4:00~9:00)の方が,B(9:00~14:00)およびC(14:00~19:00)よりも有意に多く捕獲され,渡り途上であっても,繁殖期における定着個体と同様に,早朝において活動が最も活発であることが示唆された.しかし,BC時間帯間で有意差が認められたのはルリビタキのみであった.この結果から,これらの種に関しては繁殖初期の早朝における従来のセンサス法ではかなり多くの通過個体を記録することが予想されるため,行動の違い等に着目して繁殖個体との判別を慎重に行う必要があること,さらに調査時期の選定にも種ごとの渡り時期の違いを考慮すべきであることが必要であると思われる.一方,センダイムシクイでは,時間帯による差は認められなかった.同日中に捕獲された個体数の時間帯ごとの相関係数を求めたところ,ルリビタキとアオジについてはすべての時間帯間で,ヤブサメ,ウグイスおよびセンダイムシクイではAB時間帯間のみで高い相関が得られた.これらの結果から,ルリビタキとアオジでは,限られた時間での捕獲結果から時間帯間における単回帰式を適用することにより,春期における捕獲数の日周変化や渡り傾向をかなり正確に推定することが可能であると思われる.