日本鳥学会誌
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コウノトリ Ciconia boyciana の羽根1本からの抽出DNAを用いたPCR法による性鑑別
村田 浩一伊藤 裕一郎小川 晃水野 重樹
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1998 年 46 巻 3 号 p. 157-162,179

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抄録

外形からは性判別が困難なコウノトリ(ニホンコウノトリ) Ciconia boyciana より採取した胸部の正羽1本からDNAを抽出し,ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)法での性判別を試みた.対象個体は豊岡コウノトリ保護増殖センターで繁殖した若鳥4羽で,性別はあらかじめ血液から抽出したDNAの Southern blot hybridization および体側値の判別分析で鑑定した.DNAは長さ約5mmの羽柄1本(Fig.1)からChelex®-100を用いて抽出した.ニワトリW染色体上のDNA配列(EEO.6)と相同性を有するコウノトリW染色体上の配列(XH0.6),およびそれと相同性を持ちコウノトリのZ染色体上にあると考えられる配列(XH0.6-RSM)をプライマーとしてPCRを行った結果,目的とするDNA領域を増幅することができた.増幅産物のアガロースゲル電気泳動では,雌にZおよびW染色体上の特異的配列を示す2本のバンドが認められたが,雄にはZ染色体上の特異的配列を示す1本のバンドしか出現しなかった(Fig.2).本法は,簡易,迅速,正確であり,試料採取時の保定に慣れていない鳥に対して与える影響は比較的少ないものである.このため,国の特別天然記念物でもあるコウノトリの飼育下繁殖および野生復帰計画にとっては,有用な技術のひとつとなろう.

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