産卵前の繁殖初期にツミ Accipiter gularis の雌雄間で観察された尾上げディスプレイと翼震わせディスプレイについて報告した.尾上げディスプレイは,おもに雄が営巣可能な場所で行なっていたが,雌では新しい雄とのつがい再形成直後の特定の1羽の個体で観察されたのみである.このディスプレイの機能は,雌を営巣場所に引き付けるとともに,雌の造巣行動を促すと考えられた.しかし,つがい再形成直後の雌でも観察されたことから,つがい形成にも関係している可能性があった.翼震わせディスプレイは,おもに雄が行ない,雌では明かでなかった.雄は,営巣場所の外から雌の近くへ降りたときや雌が近づいたときに行なった,個体によってディスプレイの回数に著しい違いがあった.このディスプレイは,つがいを形成したり,つがいの結び付きを強める機能があると考えられたが,なだめの機能も含まれる可能性があった.