本研究では,滋賀県北部に渡来する大型ガン類オオヒシクイの個体数の1982年から1997年にかけての年次変動を,主に気温•積雪および琵琶湖の水位変動との関係において解析した.その結果,1)滋賀県北部の冬季平均気温は全国的な冬季平均気温•積雪域の広がりと強い相関があり,個体数と負の相関があること,2)琵琶湖の水位は個体数と負の相関があること,3)滋賀県で異常に積雪が多い年は個体数が減少すること,が明らかとなった.以上の結果から,全国的な気温の低下と積雪域の拡大がオオヒシクイの南下を促すこと,琵琶湖の水位の上昇によって湖岸の採食環境が悪化し陸上へ移動すること,県内で特異的に多雪となること,が滋賀県北部に渡来するオオヒシクイの個体数の年次変動に大きく影響を及ぼす要因であると考える.