日本鳥学会誌
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伊豆諸島三宅島におけるイイジマムシクイの環境選択
高木 昌興樋口 広芳
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2000 年 49 巻 3 号 p. 113-117,157

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抄録

1991年5月と6月に伊豆諸島の三宅島でイイジマムシクイ Phylloscopus ijimaeの個体数と生息環境の調査を行なった.本研究の目的はイイジマムシクイが繁殖期に選択する環境を明らかにすることである.まず,島内に設定した景観が異なる3地域におけるさえずり個体密度を比較した.樹冠が連続した照葉樹林からなる大路池地区で最も多くのイイジマムシクイが記録された(Mean±SD/km/mapping=28.5±12.0個体).次に多かったのは落葉広葉樹の二次林からなる伊豆岬地区であった(19.9±5.5個体).この地域の森林は農地によって分断されてはいるが,連続した大きな森林も含んでいた.農耕地によって細かく分断された落葉広葉樹の二次林と照葉樹林で構成される姉川地区の個体数は最も少なかった(12.1±3.6個体).景観の違う3地域の比較から,イイジマムシクイは樹冠の連続した樹林で密度が高くなることが示唆された,次に約50m×50mの方形区を単位にして,イイジマムシクイの密度と植生に関する5つの変数,すなわち,低木層の被度,高木層の被度,森林面積,森林分断の度合い,構成樹種の関係をステップワイズ重回帰分析を用いて分析した.その結果,方形区単位の密度は高木層の被度が高く,分断の度合いが低く,照葉樹林で高くなることがわかった.これらの結果から,繁殖期のイイジマムシクイの生息環境には,樹冠がよく茂り連続した林が適しており,照葉樹林ではさらに高密度で生息する事が可能であることが示された.

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