日本鳥学会誌
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ヤマガラの雄における資源保有能力への体サイズの影響
山口 典之河野 かつら
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2001 年 50 巻 2 号 p. 65-70,108

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抄録

ヤマガラの雄間で,(1)餌獲得の優先性や繁殖場所の確保のような資源保有能力に差が存在するか,(2)差が存在する場合,どのような要因がその能力に影響を与えているか,について調査した.餌獲得の優先性については,冬期に餌台を設置し,そこでの餌をめぐる闘争を観察することで調査した.繁殖場所の確保については,巣箱を設置し,巣箱を獲得した雄を記録することで調査した.本種は形態からは雌雄の識別が困難なので,DNA性判定を行った.
冬期の餌台での調査の結果,標識した14雄間に直線的な順位が存在した.また,ふしょ長が餌獲得の優先体に影響を与えていた.しかしながら.自然条件下で餌獲得の優先性がヤマガラの生存にどのように影響しているかは不明である.冬期に餌台で標識された14雄のうち8雄が繁殖期に巣箱を利用しなかった.繁殖雄は非繁殖雄より冬期の餌をめぐる闘争に勝利する傾向が高かった.非繁殖雄は,繁殖雄よりふしょ長が短い傾向があった.以上より,雄の資源保有能力は彼らが繁殖できるかどうかに重要な影響を与えていることが示唆された.雄の繁殖成功はふしょ長と相関していなかった.これより,体サイズは主に繁殖場所獲得の競争が行われる繁殖初期に,雄の繁殖成功に重要な影響を与えている事が示唆された.

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