通常2卵産むウミネコを材料とし,産卵時期の早いグループと遅いグループで,それぞれ1羽,2羽,3羽の雛を育てさせる雛数の操作実験を,利尻島で環境条件が異なる2年間におこなった.早く繁殖した親は多くの雛を育て上げることができたが,繁殖時期と雛数操作の効果の交互作用は有意ではなかった.2000年には,25日生存雛数は,実験的に雛数を3羽に増やした巣では1雛に減らした巣より大きかった.しかし,降雨量の多かった2001年には,実験的に雛数を3羽に増やした巣の雛の生存率が低かったため,25日齢生存雛数は雛数操作に影響されなかった.よって,ウミネコの親は悪い気象条件下では3羽の雛を十分には保護できないと考えられた.年及び繁殖時期の25日齢雛体重に対する効果には交互作用がなく,雛の数を増やすと25日齢雛体重は減少した.そのため,調査年の餌条件の範囲内においては,ウミネコの親は3羽の雛を育てるに十分な給餌能力をもっているわけではないことが示唆された