日本評価研究
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特集:エビデンスに基づく実践の世界的動向と日本における取り組み
「エビデンス」の利用に関する検討
技術移転と追試過程を中心に
津富 宏
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キーワード: エビデンス, 技術移転, 追試
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2010 年 10 巻 1 号 p. 1_43-1_51

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抄録
あるプログラムが有効であるというエビデンスがつくられたとしても、エビデンスを利用すること、つまり、そのプログラムの有効性を保持ないし確認・更新しつつ実施することは容易ではない。そこで、本稿は、二つの視点で、エビデンス利用の過程を捉える。一つの視点は、技術移転、すなわち、オリジナルのプログラムの有効性を保持する過程として捉えるものであり、もう一つの視点は、追試、すなわち、オリジナルのプログラムの有効性を確認・更新する過程として捉えるものである。技術移転として捉えると、プログラムの実施に当たって、オリジナルのプログラムの有効性を保持するには、単なる知識伝達ではなく、エビデンス利用に向けて協働的なコミュニケーションが図れるよう、組織自体や組織と外部との関係を変えることが大切であることが明らかとなった。追試として捉えると、コア要素を、アウトカムの予測変数として捉え、異なるコンテキストにおける外的妥当性を高める要素(ローカルな追加や普及促進要素)を探求することが大切であることが明らかとなった。さまざまな特定分野において、技術移転の視点と追試の視点に立って、エビデンス利用を促進するため、情報提供、組織づくり・人づくり・リーダーづくりや技術支援、外部評価を担うpurveyorを創設することが次のステップである。
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© 2010 日本評価学会
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