日本評価研究
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特集:評価研究および評価実践におけるエビデンス理解の多様性と多義性
実在論的評価の理論と日本のEBPMへの示唆
西村 君平呉 書雅
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2024 年 24 巻 1 号 p. 29-44

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抄録

 日本のEBPMの課題の一つとして、科学的根拠の外的妥当性の担保が挙げられる。本稿ではこの課題の解決に向けて実在論的評価の理論に着目する。実在論的評価の焦点の一つはランダム化比較実験を応用した実験的評価(experimental evaluation)の外的妥当性の批判的検討にある。評価方法論上の特徴は科学的根拠の構築や活用に際して、データ分析以上に理論構築を重視する点にある。実在論的評価は国内外の評価研究で注目を集めつつあるが、認識論的前提やその前提が評価理論にどのように反映されているかは不透明であり、このことが理論の理解や発展、実践への適用を妨げている。そこで本稿では実在論的評価の認識論的次元に焦点をあて、その理論の要諦を明らかにした。この知見を元に、実験的評価を主軸としたEBPMの限界とその克服の方策を理論的に明らかにした。その方策とは外的妥当性の高い評価結果の希求から応用可能性の高い中範囲理論の構築へEBPMの焦点を移すことである。

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