2024 年 24 巻 1 号 p. 69-82
社会課題とその解決主体が多様化する中で、エビデンスに基づく政策立案や実践に関心が高まっている。一方、日本の民間非営利セクターの実践現場において、どの程度エビデンスが活用されているかについては明らかになっていない。本稿は民間非営利セクターの児童家庭福祉分野に従事する団体へのアンケート調査を通じて、エビデンス活用の実態について探索的な調査・分析を行った。調査結果からは、エビデンスの定義に関する認識が多様であり、その多様な認識に基づく活動が展開されていることが分かった。また、エビデンスを介入の効果を実証的に明らかにした知見だと認識する回答は全体的に低く、対人支援サービスの提供の有無をはじめとした団体や活動分野の特徴とエビデンスの定義認識の関係を見ても、これらの項目との関係に統計的に有意な差までは見られなかった。これらの結果を踏まえ、民間非営利セクターの昨今の特性を考慮した上で、エビデンスを適切なかたちで認識し、活用を推進していく際の評価者の役割を考察した。