2010 年 22 巻 2 号 p. 201-212
本研究の目的は育児・家事に対する妻の家庭責任意識が夫の育児・家事参加に影響しているか,そして妻の家庭責任意識が就業の有無や相対的資源から規定されているのかを明らかにすることである。対象は12歳以下の末子をもつ有配偶の妻682名である。二次データを用いた分析の結果,妻の家庭責任意識の強さが,夫の育児・家事参加を直接少なくするが,妻が責任意識によって行う育児・家事の多さが,相対的資源差による他の要因よりも強く育児・家事参加を制約することが明らかになった。また妻の家庭責任意識は,高い学歴を得て就業することで弱くなるが,相対的資源が少ないほど責任意識が強まることが明らかになった。この結果より,社会的に構築された妻の家庭責任意識が直接的に,さらに妻の育児・家事遂行を通して間接的にも,夫の育児・家事を強く規定しており,夫の育児・家事参加の促進のためには,夫だけでなく妻の要因も重要であることが示唆された。