2018 年 30 巻 1 号 p. 135-152
アジア諸国・地域は,現在急速な少子化と高齢化を経験し,女性の地位向上や権利拡大といった文脈の中で旧来の男性優位も崩れ,家族は大きな変化に直面している.共通する社会変化として女性の高等教育機会の拡大があるが,女性の高学歴化は家族意識や実践にどのような影響を及ぼしているのか.本稿は,日韓中台の家族意識を調べた2006年東アジア社会調査ならびに同じ調査票を用いタイ,ベトナム,マレーシア,トルコを調査したアジア比較家族調査のデータを分析して,性別役割分業意識と家事参加の共通性と差異を明らかにする.高学歴女性は,性別役割の平等を志向する点では共通しているが,家事参加との関連は国・地域によって異なる.タイがユニークで,性別役割分業を肯定する傾向が強いが,男性の家事参加が最も高い.アジア諸国・地域では高学歴化が進行しているが,それぞれの社会文化的な文脈と複雑に関係するため,家族意識の多様性が高まっている.